【updraft×パートナーインタビュー】女子プロサッカー 上野 紗稀選手

Career Training, Interview, News

2021年5月、女子プロサッカー選手の上野 紗稀選手がスポーツキャリアトレーニング事業「updraft (アップドラフト)」のアスリートキャリアトレーニングパートナーに就任しました。

幼少期からサッカーをはじめ、日本代表も経験してきた現役トップアスリートの上野選手にキャリアの悩みをどう乗り越えてこられたのか・女子サッカー界におけるキャリアの課題について、updraftキャリアディレクターの鈴木がお話を伺いました。


Profile

女子プロサッカー選手
上野 紗稀(写真左)

1994年生まれ。千葉県松戸市出身。2013~2019年、なでしこリーグ1部のJEFユナイテッド市原・千葉レディースに所属し2017年からの3年間はキャプテンを務めた。2020年、現チームに移籍。
自身が選手として身近に感じているセカンドキャリアへの不安を改善したいという思いから弊社が掲げているテーマでもある育成年代のキャリア教育の重要さに共感し、現在updraftのパートナーとしても活動している。
<代表歴>U-19日本女子代表、U-23日本女子代表、日本女子代表

TOiRO株式会社 スポーツキャリアトレーニング事業「updraft」
キャリアディレクター
鈴木 竜太(写真右)

青森山田高校サッカー部にて2010年に国体に出場。1年時に選手権でメンバー入り。大学時は千葉県リーグ優勝と千葉県選抜を経験。
その後、自分と同じ経験をしている体育会学生の就活支援に志を持ち、大手体育会学生就職支援会社(東証マザーズ)に入社。同社にて、新卒採用企業のサポート、体育会学生の就活支援を行い、4年間で約2,000名の学生をサポート。チームでのMVPと個人の年間準MVPの受賞も経験。
若年層のうちからアスリートのキャリアを支援したいという想いを実現するため、2021年TOiRO株式会社に入社。
現在はupdraftのトレーニング&コンサルティングチームを担当している。


怪我や挫折を乗り越え、挑戦を続けられた原動力は「サッカーが好き」というずっと変わらない気持ちだった

本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます!まず最初に、これまで上野選手がどのようなサッカー人生を送ってこられたのか、お伺いできますでしょうか。

上野選手:サッカーをはじめたきっかけは幼稚園のとき、グラウンドでサッカークラブの幼稚園生たちが走り回っているのを見たことです。楽しそうな姿を見て、私もやりたいと親にお願いして、小学校に進学したタイミングで地元のクラブチームに入りました。
最初は女子チームに所属していたのですが、小学4年生からは男子チームの練習に参加するようになり、周りが男の子ばかりの中に女子1人、試合にも出場していました。

中学進学時に受けた浦和レッズのレディースユース(以下浦和レッズ)のセレクションに合格し、中学1年生から高校3年生まで在籍していました。サッカーの技術に関しては、小学校時代は人よりもできていたので、クラブ入団当時は調子に乗っていましたね(笑)

甘い考えをすぐに監督に見抜かれて、かなり走らされました。試合に出られない時期も長く、初めての挫折は辛かったですが、負けず嫌いに火がつき、自分の中でスイッチが入りました。この中学1・2年の2年間が選手人生で一番きつかったですが、精神的にも体力的にも鍛えられ、今のベースとなっています。

中学1年生のときに11人いた同期は、高校に上がる際に2人に絞られ、私もなんとかチームに残ることができました。高校生になり最初は試合に出場できていたのですが、2年生のときに上手くいかない時期もあり、環境を変えてみようと思い千葉県の団体のセレクションに参加しました。

プレーをする環境を変えたことでサッカーの楽しさをより感じることができ、好きな気持ちは変わらなかったです。国体がきっかけとなり、ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(以下ジェフ)の監督に声をかけてもらい、入団を決めました。 そこから7年間はジェフでプレーしました。最後の3年間はキャプテンを務め、勝てない時期にどうするべきか、チームのことを考え、試行錯誤してきました。とても責任が大きかったですが、プレーだけではなく人間的にも非常に学びが多く、いい経験をさせてもらいました。

ジェフに在籍して1年目のときに日本代表に選出されたのですが、その後は自分のプレーヤーとしての成長という点では満足できておらず、さらにサッカーで成長できる環境に身を置きたいと考え、2020年1月に今のチームへ移籍しました。

ジェフではもっとチームのことを考えないと、と自分の強みであるアグレッシブさを無意識に押さえ込んでしまっていたと思います。今改めて、自己成長を含めサッカーを楽しんでいます。

理解のあるスポンサー企業のおかげで、働くこともサッカーも楽しく続けることができた

6歳から約20年もサッカーを続けてこられたんですね。プロになることはいつ頃から意識されていたんですか?

上野選手:中学1年生からです。高校3年生までプロサッカー選手が将来の夢だったんですが、ジェフに入団したときに女子サッカーにはプロがないということに気づきました。当時、女子サッカーはまだまだマイナーなスポーツで、選手のほとんどはアマチュアとして、サポートいただいているスポンサー企業で働きながらプレーしていました。

私も将来のことを考え、幼稚園・保育園の免許を取得を目的に大学へ通い、卒業後はスポンサーの大手生命保険会社で一般事務として働きながら、サッカーを続けていました。

時短勤務ではあったものの、他の方と同じようにやりがいを感じられる仕事を与えていただけることがとても嬉しかったです。理解のある環境で人に恵まれ、楽しく働かせていただけました。サッカーについてもプロではないものの、サポートしていただいていてトップリーグでプレーができているから恩返ししていきたいと考えていました。

プロになり、改めて引退後を意識するようになった

サッカーを続けながら、その先のキャリアについて悩んだことはありましたか?

上野選手:周りの同世代や身近な先輩方が選手を引退することが増えた2年ほど前、いつまで現役を続けていけるか分からない中、「サッカー選手をやめた後に自分はどういう風に生きていくのか」と、将来について考えるようになりました。

理解のある会社に恵まれて楽しく働けているものの、「今やっていることをこのままやり続けることは違う」という思いがありました。しかし、心からやりたいと思えることはなかなか見つけられず、調べて興味をもった仕事について、つながりをたどり色んな方に話を聞いたり、サッカー以外で自分にできることは何だろうと考えたりすることが増えましたね。

また、2021年秋の日本女子サッカー新プロリーグ創設に伴い、4月からはプロ契約を結んだことも今後のキャリアを意識するきっかけとなりました。中学生からの夢が叶ったことを嬉しく思う一方で、プロ選手としてのサッカーで結果を出すことへの責任の重さを感じています。契約期間が決まっていることもあり、これまで以上に選手の次のキャリアについても考えることが増えました。

「時間がない」「知らない」女子サッカー界におけるキャリアの課題

選手として、これからが勝負なんですね。上野選手のように、引退後のセカンドキャリアで悩む女子サッカー選手は多いのでしょうか。

上野選手:とても多いです。女子サッカー界の現状として、選手のほとんどがアマチュアだったこれまでは選手たちはサッカーをやりながら働いていたため、次のキャリアについて考えるための時間がありませんでした。

また、仕方のないことですが、仕事においてはスポーツ選手に理解のあるスポンサー企業の限られた職種しか選ぶことしかできないため、選手本人の希望とは関係なく、決められたところで働くしかないというのが現状でした。

プロ化によって、今までよりも時間ができたといってもコンディションの管理のために心身のケアやトレーニングの比重が増えるため、これまでと使える時間はあまり変わりません。そのため、今後もセカンドキャリアで悩む選手は出てくると思います。

選手の中には引退後事業を立ち上げるなど、ビジネスでも自己実現を追求している方もいますが、それはほんの一部です。私も含め、これまでサッカーしかやってこなかったため、どんな事業や会社があるのか知らない選手は多く、現役引退後はコーチなどサッカーに関係する仕事や保健体育の先生、飲食業といった身近な職業に就く選手が多いです。

育成年代のうちからスポーツ選手以外のキャリアを考えることの重要性を伝えたい

キャリア選択の「偏り」と「こだわり」はアスリート共通の課題ですよね。今回、上野選手がupdraftパートナーになっていただけたのはどうしてでしょうか?

上野選手:「プロサッカー選手になる」という明確な目標に向けて努力してきましたが、引退後どうするかは最近まで考えたことがありませんでした。自分自身がセカンドキャリアへの不安を感じたときに、もっと若いうちから色々な情報を得て、行動しておけばよかったと後悔しています。

パートナーになった理由は、updraftが、就職・転職支援というかたちではなく、キャリアの根本的な解決策として、育成年代に向けたキャリアトレーニングを実施していている点や「プロを目指す過程でひとりひとりが自分を知るところから始め、選手だけではないキャリアの選択肢を育んでほしい」という考えに共感したからです。

この取り組みをもっと広めたいと思いますし、自分自身がプロスポーツ選手としてキャリアに悩んできた当事者だからこそ、今、プロを目指している子どもたちに伝えられることがあると考え、パートナーになることを決意しました。

先日行われた細田学園高等学校サッカー部でのキャリアトレーニングの様子

個人的にはupdraftのキャリアトレーニングは遅くとも高校生のときには受講するべきだと思います。厳しい話ですが、高校2年生・3年生で周りの選手たちと比較して自分がプロとしてやっていけるかどうかはだいたい見えてくるので、その手前の高校1年生のときから選手以外のキャリアの土台をつくるために自分を知るということを始めたほうがいいと考えるからです。

現役を引退した後に「やりたいことがない」という選手を減らす

ありがとうございます。updraftの取り組みに共感いただけてとても嬉しいです。最後に、上野選手が今後やっていきたいこと、updraftに期待することについてお聞かせいただけますか?

上野選手:サッカー選手としては、女子サッカーの発展・チームの勝利に貢献していけるよう、まずはコンスタントに試合に出られるようになることを目指しています。また、これまで大切にしてきた「楽しくサッカーをやる」という自分の想いを叶え続けるためにも、全力で努力していきます。

updraftのパートナーとしては、現役を引退した後にやりたいことがないという選手を減らしたいです。学生に対してのチームビルディングやトレーニングを通じて自分が伝えられることを伝え、考えるきっかけとなる環境をつくりたいと考えています。

updraftへ期待することはひとつで、これからもひとりでも多くの学生に気づきを与えていってほしいです。キャリアを考えることを先延ばしにせず、今が大事であるということを学生たちに伝え、一人ひとりの成長を導かれていくことを期待しています。

本日、上野選手からお話を伺い、改めてupdraftの取り組みが選手たちへ与える価値とその責任の重さについて考えさせられる機会となりました。ありがとうございました!